2026年8月18日

こんにちは、中野島ほしの内科クリニック院長の星野です。
院長ブログ第11回では、2026年7月16日(木)に出席した「第2回日本脳神経超音波と栓子検出学会総会」で見聞きした内容について取り上げます。
日本脳神経超音波と栓子検出学会総会は、日本脳神経超音波と栓子検出学会が主催する1年に1回の大規模な学会で、今年は2026年7月16日(木)と7月17日(金)の2日間、新潟県の朱鷺メッセで開催されました。
全国の脳神経内科医・脳神経外科医・循環器内科医・超音波検査技師などが集まり、主に脳血管・頸動脈・大動脈・下肢静脈、神経・筋の超音波診療における最新の研究結果や治療法などの報告、今後の課題についての議論を行います。
私はクリニックの休診日である7月16日(木)に出席しました。ポスター発表を拝見し、一部の講演を拝聴しましたので、いくつかの内容をご紹介させていただきます。 一部専門的な内容で分かりにくい医学用語も出てくるかと思いますが、ぜひご一読ください。
講演:ブレインハートチームのこれから
高齢の方が増えていることもあり、心臓の病気が原因で脳梗塞を起こす患者さんが増えています。たとえば、「心房細動」という不整脈があると、心臓の中に血のかたまり(血栓)ができ、それが脳の血管に流れて脳梗塞を起こすことがあります。また、心臓にある「卵円孔開存」という小さな穴を通って血栓が脳に流れ、脳梗塞を起こす場合もあります。
脳梗塞の中には、血栓がどこから来たのかはっきりしないものもあります。このような場合でも、心臓や血管に原因が隠れていることがあります。そのため、心臓の状態を詳しく調べる「経食道心臓超音波検査」などを行い、脳だけでなく心臓や血管も含めて原因を調べることが大切です。
このように、脳の病気を診る医師と心臓の病気を診る医師が協力して診療する「ブレインハートチーム」の重要性が高まっています。脳梗塞を起こした場合には、脳の治療だけでなく、脳梗塞の原因となった心臓の病気を見つけ、再発を防ぐことも重要です。
最近では、心房細動に対する「左心耳閉鎖術」や、卵円孔開存に対する「カテーテル閉鎖術」など、心臓に小さな器具(デバイス)を入れて治療する方法も進歩しています。こうした治療を行うかどうかを判断するときには、治療そのものだけでなく、治療後に血液を固まりにくくする薬(抗血栓薬)をどのように使うかまで考えることが大切です。そのため、脳梗塞の再発を防ぐ観点から、治療後の経過もしっかりと確認していく姿勢が重要であると述べられていました。
さらに、脳梗塞の治療では、医師だけでなく、リハビリテーション、看護、薬剤、栄養などの専門スタッフが協力することも大切です。体の動きだけでなく、記憶や考える力などの認知機能についても確認し、できるだけ元の生活に近づけること、そして生活の質を高めることを目指します。 今後は、これまでに蓄積された医療データやAI(人工知能)も活用しながら、一人ひとりの脳梗塞の再発リスクに合わせて、より適切な治療や予防を選べるようになることが期待されていると述べられていました。
講演:がんと脳卒中
がんと脳卒中を同時に発症する患者さんは増えています。そのため最近では、がんと脳卒中の関係を考えながら診療する「Stroke Oncology(腫瘍脳卒中学)」という考え方が注目されています。
がんの患者さんに脳梗塞が起こった場合、その原因は一つとは限りません。大きく分けると、①がんそのものが原因となる場合、②がんの治療が原因となる場合、③がんとは関係なく、一般的な脳梗塞と同じ原因で起こる場合があります。そのため、脳梗塞がなぜ起こったのかを詳しく調べることが大切です。
その際に役立つのが、「超音波検査」です。体への負担が比較的少なく、必要に応じて繰り返し行えるため、病気の原因を調べたり、治療がうまく効いているかを確認したりするのに役立ちます。
がんそのものが原因となる脳梗塞では、がんの影響で血液が固まりやすくなることがあります。また、心臓の弁に血のかたまりができる「非細菌性血栓性心内膜炎」や、足などにできた血栓が心臓の小さな穴を通って脳に流れることで脳梗塞を起こす場合もあります。こうした場合には、心臓の超音波検査で心臓の状態や血栓などを確認したり、足の静脈の超音波検査で血栓がないかを調べたりします。また、脳の血管の超音波検査では、血管を流れる小さな血栓などを検出することで、治療の効果や脳梗塞が再び起こる可能性を判断する手がかりになることがあります。
一方、がんの治療が原因となる場合もあります。たとえば、放射線治療を受けた方では、首の血管が狭くなることがあります。このような変化を調べるためにも、「首の血管の超音波検査(頸動脈超音波検査)」が役立ちます。
また、がんを合併していても、脳梗塞の原因ががんとは関係なく、首の血管の動脈硬化による血管の狭窄など、一般的な原因で起こっていることもあります。そのため、がんがあるからといって原因を決めつけず、一人ひとりの状態に合わせて詳しく調べることが重要です。 このように、がんと脳卒中が合併している場合には、超音波検査を使って脳、心臓、血管などを詳しく調べることで、脳梗塞が起こった原因を明らかにし、適切な治療方法を選ぶことにつながります。以上より、演者は、超音波検査はがんの患者さんの脳梗塞を診療するうえで、とても重要な検査の一つであると述べていました。
ポスター発表:大動脈解離を示唆する頸動脈ドップラー波形異常についての検討
脳梗塞を発症した直後の治療では、血栓を溶かす薬を点滴する治療(血栓溶解療法)や、カテーテルという細い管を血管に入れて血栓を取り除く血栓回収療法が行われることがあります。これらの治療は、できるだけ早く開始するほど効果が期待できます。
しかし、脳梗塞の原因が急性大動脈解離(心臓から全身へ血液を送る大きな血管の壁が裂ける病気)だった場合には注意が必要です。この状態で血栓を溶かしたり、血流を再開させたりする治療を行うと、大動脈の状態を悪化させる危険があるため、通常は行ってはいけません。
そのため、脳梗塞の患者さんでは、大動脈解離が隠れていないかをできるだけ早く確認することが重要です。大動脈解離を詳しく調べるには造影CT検査が有用ですが、検査の準備などに時間がかかる場合があります。
そこで役立つのが、「首の血管の超音波検査(頸動脈超音波検査)」です。ベッドサイドですぐに行うことができ、体への負担も比較的小さい検査です。この検査では、大動脈解離に伴って首の血管に現れる特徴的な変化を見つけられることがあります。
今回の報告では、急性大動脈解離の患者さん11人について頸動脈超音波検査を行ったところ、血管の壁が裂けてできた膜(intimal flap)や、通常とは異なる血液の流れ方が確認されました。特に、血液が行ったり来たりするような特徴的な血流波形などが、大動脈解離を疑う手がかりになりました。
このことから、発表者は、頸動脈超音波検査は、大動脈解離を直接診断する検査ではないが、脳梗塞の患者さんに大動脈解離が隠れている可能性を早く見つけるための重要な手がかりになると考えられる。そして、脳梗塞では「一刻も早い治療」が重要であるが、原因によってはその治療が危険になることもあるため、頸動脈超音波検査などを活用して原因を素早く見極め、安全で適切な治療につなげることが大切であると述べていました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
当院では、上記の講演でも紹介されておりました、「頸動脈超音波検査」をはじめ、各種超音波検査に対応しています。
私自身、脳神経超音波検査士という資格を有しており、大学院にて頸動脈超音波に関する研究を行っておりました。
頸動脈超音波検査による動脈硬化の評価などは、事前にご予約いただかなくても、普段の診療の中で受けていただくことが可能です。また、必要に応じて下肢静脈超音波検査なども行っています。
超音波検査は、身体への負担が少ない低侵襲な検査で、放射線を使用しないため、安心して受けていただけます。「血管の状態が気になる」「足の症状が心配」など、気になる症状やご不安なことがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
皆さまのご来院をお待ちしております。
また、今後も参加した学会で見聞きした情報をご紹介させていただきますので、気になるトピックがありましたら診察時などにお気軽にご質問ください。