【院長ブログ第8回:第123回日本内科学会総会・講演会】|中野島ほしの内科クリニック|川崎市多摩区の内科・脳神経内科

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【院長ブログ第8回:第123回日本内科学会総会・講演会】

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2026年4月21日

【院長ブログ第8回:第123回日本内科学会総会・講演会】

こんにちは、中野島ほしの内科クリニック院長の星野です。
院長ブログ第8回では、2026年4月12日(日)に出席した第123回日本内科学会総会・講演会で聴講した内容について取り上げます。


 
日本内科学会総会・講演会は、日本内科学会が主催する1年に1回の大規模な学会で、今年は2026年4月10日(金)から4月12日(日)までの3日間、東京国際フォーラムで開催されました。
全国の様々な内科領域の専門的な医師が集まり、最新の研究結果や治療法などの報告、現時点での内科医療の問題点や今後の課題についての議論を行います。
私はクリニックの休診日である4月12日(日)に出席し、主に3つのテーマについて講演を拝聴しましたので、大まかな内容をご紹介させていただきます。
一部専門的な内容で分かりにくい医学用語も出てくるかと思いますが、ぜひご一読ください。

1型糖尿病のステージ分類の重要性について


 
1型糖尿病とは、GAD抗体やIA-2抗体などの自己抗体が膵臓のβ細胞を破壊してしまい、血糖値を下げるインスリンが分泌されなくなってしまう病気です。それにより高血糖状態が持続し、様々な症状や障害をきたします。インスリンが数日で枯渇してしまう劇症、数ヶ月で枯渇してしまう急性発症、数年かけて枯渇する緩徐進行の3つに分類されます。治療は生涯にわたるインスリン療法が原則になります。
 
1型糖尿病は小児期に発症することが多いですが、他の病気と同様に発症前の予知および予防が望まれます。1型糖尿病の発症予防のため海外では発症前を含めた病期のステージングが行われており、日本でも最近になってステージ分類の概念が広まってきています。
以下の3つのステージに分類されます。
ステージ1:無症状+膵島関連自己抗体が複数陽性+正常耐糖能
ステージ2:無症状+膵島関連自己抗体が複数陽性+耐糖能異常
ステージ3:1型糖尿病発症後
 
近年、1型糖尿病の近親者でありステージ分類ステージ2の患者さんを対象として抗CD3抗体を投与すると1型糖尿病の発症抑制が認められることが示されました。
現在日本では、ステージ1および2の現状把握、ステージ2への免疫学的な介入試験が開始されており、その成果に期待が集まっています。
 

最新の脳梗塞治療と再発予防について


 
かつて日本では脳血管障害において脳出血が多くの割合を占めていましたが、血圧管理の重要性が認識され、適切な降圧療法が普及したことで脳出血は減少し、現在では脳梗塞が多くの割合を占めています。
脳梗塞はその病態によって、アテローム血栓性脳梗塞・心原性脳塞栓症・ラクナ梗塞という病型に大きく分類されます。降圧療法の普及によってラクナ梗塞患者さんが減少している一方で、アテローム血栓性脳梗塞や心原性脳塞栓症の患者さんは減少していません。
 
脳梗塞を発症して間もない急性期の治療は、血栓溶解療法および血栓回収療法の普及により、劇的に予後が改善しつつあります。
血栓溶解療法とは、点滴の薬剤で詰まった血の塊を溶かし、脳への血流を取り戻す治療法です。
血栓回収療法とは、カテーテルというワイヤーのような医療器具を血管内に挿入して先端を脳血管まで進ませ、詰まった血の塊を直接取り除き脳血流を回復させる治療法です。
これらの治療法は脳梗塞を発症してから早期に行われるほど有効性が高く、また出血などの有害事象をきたす確率が低下するため、脳梗塞発症を疑うような症状がみられた場合はなるべく早く医療機関に受診することが重要です。
 
脳梗塞発症を疑う症状は多岐にわたりますが、脳の太い血管が詰まってしまう主幹動脈閉塞(Large Vessel Occlusion; LVO)に伴う脳梗塞を予測する観察項目があります。
1. 共同偏視:両方の眼球が一側を向いている。
2. 半側空間無視:顔の50cmほど手前で指4本をかざすと、片側を認識できず指の数を正確に回答できない。
3. 失語:眼鏡や時計など物品の名前を言えない。
4. 脈不整:手首などを触れた時に脈のリズムが不規則である。
5. 顔面麻痺:顔がゆがむ。
6. 上肢麻痺:腕の片側が動かしにくい。
上記の6項目のうち、3項目以上に該当する場合は主幹動脈閉塞である可能性が高いとされています。
 
脳梗塞の再発予防は病型により異なります。
アテローム血栓性脳梗塞では、血液をサラサラにする抗血小板薬の2剤併用療法(DAPT)を発症後から3週間続け、その後は抗血小板薬単剤に切り替えて継続します。また動脈硬化リスクに対する管理が非常に重要で、早期からLDL-コレステロール値を100mg/dL以下(心臓の血管障害を合併している場合は70mg/dL以下)に下げます。血圧は脳主幹動脈に狭窄がない場合、慢性期に130/80mmHg以下に降圧します。血糖値の管理も重要です。
 
心原性脳塞栓症は心房細動という不整脈が原因で起こることの多い脳梗塞ですが、急性期は血流の再開に伴い脳に出血をきたしやすいため、再発予防は発症後1週間経過してから、抗血小板薬とは異なる機序で血液をサラサラにする直接経口抗凝固薬(DOAC)を開始します。また、アブレーションや抗不整脈薬による脈拍リズムの改善も推奨されています。

てんかん診療の現状と今後について


 
てんかんとは、脳の神経細胞の異常な電気的興奮により、様々な症状をきたす疾患です。
てんかんの有病率は全人口のおよそ1%以上で、患者数100万人を超えるとされています。
かつては小児に多い疾患でしたが、現在では成人や高齢者まであらゆる年代に起こる疾患と認識されています。
 
よく「てんかん」と「けいれん」は混同されますが、けいれんは一つの発作性の症状であり、てんかんという病気の症状はけいれん発作以外にも感覚障害・意識減損・自動症・高次脳機能障害・物忘れ発作など多彩です。
 
てんかんの治療は主に「抗てんかん薬」と呼ばれる薬を内服しますが、これらの薬はてんかんそのものを治療しているのではなく、てんかん発作を抑制・鎮静化させる作用が主体の「抗発作薬」と認識すべきです。
 
講演において演者の医師は、てんかんを『炭・石炭の火種』に例えていました。
・何らかの原因で炭・石炭に火がつくと、その部分は赤く盛んに火力を増す(てんかん焦点)。
・さらに強くなると炎を出して燃えることとなる(大発作)。
・大きな炎には水(抗発作薬)をかけると、一旦は炎が消える(発作時あるいは急性期の抗発作薬での治療)。
・しかし芯の火種はまだ消えておらず、そのまま放置すると繰り返し炎を出してくる。そのため、適切な量と種類の水(抗発作薬)を丹念にかけながら、火種を消していくことになる(慢性期の治療)。
・少量の水をかけ続ける期間は一定期間(2年間以上)におよぶが、途中で水をかけることをやめてしまう(怠薬)、または風が吹いたり湿度が低くなる(過労や睡眠不足)と火種が再燃してしまうことがある。
・一定の期間煙も出ず、火種が消えたと経験的に言える期間にわたって水をかけ続けて、火種が消えたことを確認して(脳波検査)、水をかけることを徐々に減らし(薬の減量)、最後には中止する(断薬)。
 
上記の例えのようにてんかんの治療は短期間発作を抑えれば済むものではなく、数年以上継続していくものです。
また、抗発作薬の内服以外にも、てんかん外科での焦点切除術、脳の直接的間接的刺激手法によるてんかん伝播のネットワーク機構も重視したニューロモデュレーション治療など、患者さんの病態に応じた治療選択肢が大きく広がってきています。
 
脳波検査においても、自動AI判読ソフトが海外で承認され始めています。
脳波の判読は今もなお基本的に医師の目により行っており、医師の熟練度により判読精度は左右されてしまいます。また判読に時間も要します。AIが脳波を自動判読してくれることで評価の精度は均一化され、また脳波検査の汎用化を促進させることが期待されます。
しかしながらAI判読機能の検証過程においてはやはり人間の医師の力が必要になるため、今後も医師による脳波判読の修練や教育は継続していく必要があります。
 
 


私が拝聴した3つの講演の内容についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
個人的にはてんかんの病態に関する『炭・石炭の火種』の例えは非常に分かりやすく、また患者さんへも説明しやすいと感じました。
今後も参加した学会で見聞きした情報をご紹介させていただきますので、気になるトピックがありましたら診察時などにお気軽にご質問ください。

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